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『女神から人間へ』“From Goddess To Mortal”

 2009-01-20
FromGoddessMortal_medium.jpg

☆☆☆☆☆

本書は実際に(1984年~1991年)生き神、クマリであったラシュミラ・シャキャ女史自身による回顧録である。(聞き手は、日本に関してもいくつか本を出していらっしゃるスコット・ベリー氏)
ネパール人でももっている、クマリに関する様々な誤解を解くための良書である。
例えば、
*クマリは厳しい身体条件をクリアしなければならない。
*選考のために水牛の生首、108頭と一晩(泣かずに)いなければいけない。
*クマリ(経験者)と結婚すると死ぬ。

前半はクマリとしての生活について書かれているが、後半は題目の通り「神」として育った女の子がいかにして「普通」の女の子に変わっていったかをまるで小説かのように書かれている。特に学校生活の影響が強調されている。

最後に、近年「人権侵害」として批判されつつあるクマリ文化だが、ネパールにおけるストリート・チルドレン、児童労働とは比ではないことを本人が主張する。もちろん、クマリ期間中の教育やその後の奨学金やフォロー・アップなどを提供する必要がある。

この本は最後の「あとがき」まで読むことがお勧め。意外な(小さな)事実が隠されていてそれがわかると自然に笑みがこぼれるに違いない。

洋書であるが、そんなに難しい用語が使われていないので英語の「勉強」としてでも是非ご購読下さい。

(ちなみに、ラシュミラ女史は日本人に対して好印象があり、日本語を勉強しているとのこと。)
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日本人女性がネパールでモテるワケ

 2009-03-14
今日はホワイトデー。ということで今日は特別に恋愛に関する話題。とは言っても論文紹介だ。

ネパールに行かれて実感された方が多いかも知れないが、日本人女性はネパールでモテる。今日はそのワケを文化人類学的に研究された論文をここで紹介しよう。この論文はネパールでも有数な査読付きジャーナルStudies in Nepali History and Societyに掲載されたものである。出版者はカトマンドゥ・KantipathのMandala Book Pointなので、在ネパールの方で読みたい方はそちらでお求め下さい。日本では、数少ない大学図書館で配置されている。神大の学外所蔵検索によると、東大、金大、京大、民博、阪大にこのジャナールがある。

論文名:
Chisono Yamaga(2007), Chinese Food, American Money, Japanese Wife and Nepali Machismo,Studies in Nepali History and Society,12(1):95-118.Mandala Book Point.

タイトルでも分かるように「食べ物なら中華、金ならアメリカドル、そして嫁なら日本人」というネパールのことわざでもわかるネパール人男性の固定観念に注目している。論文の目的は、いかにしてネパール人男性はアジア的「他」を通して性的なアイデンティティを再構築しているのかと目指している。学術論文なのでちょっと難しそうですが、基本的にはなぜネパール男は日本人女性を求めるのかを説明している。
筆者はネパール有数の観光地タメルを中心に、日本人女性と関係をもっている方々へ深い聞き取り調査を行っている。その内容を先行研究とうまくリンクさせつつ論じている。
まず、日本人女性がなぜ人気かというと「まぁ、日本へ行くため」というのもあるかも知れないが、その裏にあるのは、ネパールで日本人女性といえば献身的で、一途だというネパール人女性と重なる部分がある一方で、性的に非常にオープンで経済的にも自立しているという矛盾したものの幻想を抱かれているからと理解できる。前者の伝統的な部分が西欧女性観光客に存在しない部分でなかなか自分を理解してもらえない恐れをもっているということになる。恋愛で自分を理解してもらえないことほど恐ろしいことはない。
また、近代化・グロバル化の観点からいうと、発展途上国のネパール人が先進国からの観光客に出会うことによって、観光客みたいになりたい・発展したいという欲求に駆られる。しかし、実際のネパール社会はそうすぐに先進国みたいになれるものでもなく、日々の曲がり角に困難が待ち受けていることにネパール男は挫折を覚えるわけである。一方、ネパールの若者が思う「愛」とは「人生の成功」につながることであって、日々の挫折に見舞われているネパール男は、日本人女性は成功のシンボルであるという空想をする。

ということで日本人女性がネパールでモテる理由を論文を参考に書いてみた。結論を書かなかったが、筆者はどのようにこの事象をみているのかと気になる方は是非論文を読んで下さい。語りを中心に書いてある論文なので、英語ですがきっと英語が得意でないという方でも面白く読めるモノだと思う。まだ、学術的に重要視されている先行研究の中で自分の研究の位置づけ、特に社会科学で重視されている「厚い記述」が参考になるいい論文だ。

まぁ、先日の「ネパール人」アイデンティティ問題でも書いた通り、「ネパール人」をいっしょくたにして語ることは可能なのかという疑問が残る。文化の呪縛は確かに存在すると思うが、日本人同士の恋愛と同じように実際はケース・バイ・ケースである。
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