国歌を変えても、国旗を変えない理由

 2009-04-17
ネパールでは暫定政府ができてから様々な国家シンボルを変えることが盛んだ。国章を変え、国歌も変えている。でも、様々な変更の中で国旗だけは変えていない。それはなぜかちょっと考えることにしたい。というのも、谷川先生のネパール評論から考えさせられたものだが。。。

谷川先生によると「国旗図案の解釈は難しいが,この図案はおそらくヒンドゥー教的なものだ。もしそうなら,世俗国家をウリにしているのだから,国旗も変えなければならないことになる。」
(ネパールが世俗国家をウリにしているのかどうか疑問だが、)個人的には国旗がヒンドゥ教のシンボルとは知らなかったので、ちょっとググってみたのだがそのような説もあるらしい。

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基本的に学校で教わる国旗の意味というのは;
三角の形:ヒマラヤ
赤:ネパール人の情熱や勇敢さ
縁の青:平和
太陽と月:太陽と月がいる限りネパールという国は存在する(独立性)

学校で習うことなので、多くのネパール国民はこのように信じていると思う。

さて、本題のなぜ変えないかというと、今回の政変の大きな目玉というのが王制廃止である。以前も議論したことあるが、日本の場合天皇が国家の中心である考え方が強い支持基盤を持つ。しかし、ネパールの場合、国家の中心に国王というのがあまり強い基盤を持たない。というのも、王族が社会威信の維持ができていないからとも言えよう。
変更された国章や国歌というのは国王のイメージが強く残ってたものであった(例えば、国章には王冠の印があり、国歌はまさに国王万歳の歌である)のに対して、国旗はネパール国民の統一シンボルであり、ネパール独立のシンボルとして理解されている。しかも、世界で唯一の三角国旗であるため、新国旗の提案があっても反対意見が多い。
(英語版MIXIみたいな、FACEBOOKの新ネパール国旗反対コミュニティーには14503人ものメンバーがいる。少なくとも、パソコンを使う知識層?には新国旗がかなり不評ということがこれで明確だ。)

new flag
新国旗案

病めるネパール社会

 2009-07-06
最近、ネパールにおける身代金目的の誘拐・殺人事件の報道がここ数ヶ月増えている。その中でも、先月起こった、元教師による誘拐・殺人事件は特に注目を集めている。元教師の容疑者は教え子(16)を使い、知り合いの(大金を持っている情報を得たため)娘(19)を誘拐、誘拐後数時間で殺害し遺体をバラバラに解体、複数の地域で遺棄している。

時間がたつにつれ、事件の残酷な詳細が浮かびあがり、ネパール国民を憤慨させている。なんと昨日開かれた初公判で聴衆が容疑者の二人を襲う始末(Nepalnews)。新聞等で事件の全貌がかなり詳細に載せられており、模倣犯がでるのではないかと心配にさえなる。

社会制度に生じた亀裂が犯罪を生む。しかし、多くの場合我々はこのような残酷な事件はたまたまの変わりものが起こした例外であることとする。C.K.Lal氏は次のように指摘している「近代の物質(拝金)主義、階級格差、失業、内紛の長期効果が合わさり、小さな事件でさえ耐え難い割合の悲劇の引き金となりえる」(Nepalitimes)。まさにその通りである。現在のネパールは病んでいるのであり、今回の事件はその兆候であることは理解すべきだと思う。

今回のような事件は誰にでも起こりえる事件なのである。実は、犯人は僕の嫁や義弟・義妹の元恩師でもあるのだ。この事件で我家族もかなりのショックを受けている。嫁によると犯人は厳しい指導で知られており、彼が言うことは絶対であった。共犯として巻き込まれた教え子もきっと言うがままになってしまった節がある。(共犯の教え子は被害者を嘘の懸賞金情報で呼び出し、容疑者の自宅までつれていった容疑がある。)もしかすると、自分(嫁)、または義妹(共犯の教え子と同級生)さえ言うがままに共犯になっていた可能性もあるのだと考えると背筋が凍る。

どこの社会でもそうだが、ネパール社会では特に多くのことが「ビスヮース」(信頼)に基づいている。金銭のやり取りから、物の貸し借り、すべてが「信頼」が基本。しかし、今回の事件では容疑者は被害者の家族にとっても、被害者にとっても信頼者のひとりであると共に、教師という立場にいた皆に信頼される存在であった。このように皆に「信頼」される人間が起こした今回のような事件が社会の「信頼」に対する考え方に変化をもたらすのではないかと個人的に思っている。もっとも、それが「教師」という職業的地位の低下から始まるのではないかと思う。

不条理

 2009-07-30
現在西ネパールを中心に下痢が流行っている。先進国ではなんともない下痢だが、ネパールではすでに180名を超える人々が無くなっている。毎年数十人が下痢で亡くなるのが「普通」な国、ネパール。今年は患者の排泄物からコレラ菌が見つかっており、今後の患者拡大の可能性が否めない。

下痢にしろ、コレラにしろ、水分補給が大事になるが、ネパールの田舎では下痢の場合「水を与えない方がいい」という迷信がある。もちろん、衛生状況が悪いというのもここまで死者が拡大している理由だ。さらに、下痢が感染するとして、患者の看病を放置して亡くなっている人もいる。

西ネパールはネパールの中でも開発が一番遅れている地域が多いが、開発予算も多い。なのに、この様。今まで政府が何をしてきたのか疑問に思う。今回の感染拡大への対応遅さに対しても国内・外から批判が集まっている。

治安悪化と生活の質向上

 2009-08-12
昨日、パタン市内のネパール・コングレス党の本部がある建物で爆破テロが起きた。すでに予告が合った犯行だったので、幸いケガ人はなかった。パタン市内の別の場所でも爆弾が仕掛けられていたが軍部隊が解体に成功し、被害はなかった。犯行声明は教会での爆破テロで有名になったネパール防衛軍で、ネパールをヒンズ国家に戻すよう要求している。ネパールでは現在、タライを中心に100を超える武力組織が活動中であり、治安は日々悪化している。

一方で、昨日発表された労働調査によると10年前の労働調査と比較してネパール人の生活の質が向上したという。比較のもととなる10年前のデータを示してない記事だが、16000世帯を対象に行われた調査によると、主な調査結果は以下の通りだ。
1.家を持っている世帯:89.2%

2.借家:9.2%
(残りの1.6%は路上?)

3.テレビがある世帯:33.2%

4.ラジオがある世帯:57.9%

5.固定電話がある世帯:9.8%

6.携帯がある世帯:28.3%
(繋がりにくい携帯だが。)

7.パソコンがある世帯:3.1%

8.農地がある世帯:78.4%

9.出稼ぎしている(人がいる)世帯:29.1%

10.電気を利用できる:56.1%
(18時間の停電に見舞われることもあるが)

11.LPGガス利用者:12.3%

12.調理用に木材を使う:68.4%

10年も立てば多少のインフラ整備も進み、発展もするものだが、貧富の差が益々進むネパールである。この貧富の差が紛争の種となる。果たして、平和なしに物質的な発展のみが真の発展と言えるのだろうか。

ネパール企業で働く:従業員向けのイベント

 2009-09-25
まだいつになるかわからないが、きっと近未来であることを信じ、就職先としてネパール企業のことを調べることがある。また情報通信の進歩によって会うこともない同級生が、どのように、どこで働いているのかがわかる便利なご時世である。

近年目につくのが従業員向けの様々なイベントである。誕生日会、ボーリング、定期的な飲み会、従来外国人が対象だったラフティング、また一流企業では海外(インド)訪問が一般的になってきている気がするのは私だけだろうか。

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以前は、会社からのイベントといえば、年一回の遠足というところではなかっただろうか。消費文化の趨勢とも言えよう。近年の不安定的な政治状況による人材の外国への流出や文化となりつつストライキを防ぐ経営者の努力ともとらえることができる。

しかし、お気づきになったかも知れないが、これらの企業に働くのは中産階級以上のごくわずかな層である。上記のようなイベントを行っていると情報を得ているのは現在盛んな情報通信企業や旅行業者であり、「コネ」や「学歴」がある中産階級以上が従事する職業なのである。

低所得層が従事している多くの職業は単純労働であるため代替の労働者はいくらでもあり、労務管理に重点を置く企業は少ない。また多くの企業が内戦期間および現在のネパール南部の不安定な治安によって全滅しているところも多い。

傍からみている私としてはますます格差を実感するのだが、当事者たちはどのように思っているのだろうか。
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